ULIジャパン メンバー独占インタビュー 南川しのぶインタビュー
南川 しのぶ 氏 一般財団法人日本不動産研究所 REA-Tech研究開発グループ主任研究員不動産鑑定士早稲田大学を卒業後、IT企業、不動産鑑定事務所を経て入所。空家対策業務に従事したのち現職。現職では不動産テックチームの一員などとして社会課題と不動産に関する研究開発を行う。 |
1)ULI NEXTジャパンのアドバイザーの具体的なNEXTの活動とアドバイザーの役割について教えてください。 | NEXTは「持続可能な地方創生」をテーマに調査と対話を続け、「不動産業を通じた地方創生への寄与は可能なのか」という命題に直面してきました。メンバーは、あらかじめ持続可能性を意識しながら地方創生に係る策を検討するならば、住民のQOL向上と企業の中長期的事業展開が鍵となり得る、というパラダイムに到達し、実際に取り組みの端緒を開こうとしています。
創設に当たりコ・チェアから求められた役割は、「公益団体としての活動、特に調査と提言のイロハ」「レポート力とプレゼン力の醸成」「最初で最大の応援者であること」でした。実際は各メンバーのスキルが多様でいずれも高く、活動はスムーズです。 |
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2)アドバイザーやリーダーとして組織を指導する上で気をつけていることは何ですか? | 公益団体として活動することの前提、制約、可能性を感じていただくこと。そして、調査と提言は不動産プロフェッショナルとしての立場を保つこと。これらによって、活動と成果に自らアイデンティティと知見が発揮されると信じ、実感しています。 | ||
3)地方創生において、どのようなREテックに需要がありますか。また活用実現のために必要なこととは? | MaaS(Mobility as a Service)とスペースシェアリングに期待します。鍵となるのは移動コスト・契約コストの軽減と、潜在需要・潜在供給の掘り起こしと考えているからです。
MaaSアプリによる旅行者・住民の移動負担減が行動範囲の拡大につながれば、活用できる不動産の範囲が拡がります。また、スペースシェアリングは、顕在化する空き地/空き家/空き店舗に対する潜在需給の掘り起こしを助け、需給のミスマッチ解消に寄与します。これは草の根活動に聞こえますが、事業活動に寄与するテックも質は同じです。 |
4)NEXTの活動はメンバーの終業後、遅くまでミーティングをすることもあります。本業やボランティアなどでご多忙な中、ワークライフバランスを保つための鍵とは? | 私の印象では、NEXTには互いに仕事以外の生活、就寝時間、ライフステージがあることを尊重する雰囲気がありました。画面を横切る猫やミュートにする子供、体調や家族を理由とする活動のトーンダウンは前提として受け止めています。タスクは2人以上で共有され、成果を持ち寄れない人も含めてプロジェクトが進む体制が自然に醸成されました。また、COVID19を奇貨として各人がNEXTを仕事とプライベートの中間にうまく位置づけていた印象でした。会合や実地調査(という楽しみ)が大幅に制限された状況で、NEXTが建設的な気分転換だった側面もあるようです。 | ||
5)今後のNEXTの活動の見どころをお聞かせください。 | NEXTは千葉県と徳島県の自治体で活動を企図し、情報収集しています。メンバーが同市町村を選んだ理由は多分に地縁等の偶発的要因が大きいようです。また、活動の具体的なあり方は地域ごとに異なるでしょう。しかし、メンバーの活動がもたらすパラダイムが他の地域においても参考になる可能性があります。私どもアドバイザーは引き続きNEXTに伴走し、その教訓を他地域に橋渡しする一助を担いたいと考えます。 |
※MaaS:(Mobility as a Service。例として経路検索アプリに各地域のタクシーやレンタサイクルまでが網羅され、1クリックで各々の予約と事前決済が完結するイメージ。予約、契約コストが極力ゼロに近づく。利用者はスマホのアプリを見せるだけで現地に到着できる。