メンバー独占インタビュー 塗矢眞介
ペイシャンス・キャピタル・グループ株式会社
取締役 投資部長
YLGチェア
塗矢 眞介
シンガポールと日本を拠点とする不動産プライベート・エクイティ・ファームであるペイシェンスキャピタルグループの投資責任者。
バンクオブ・アメリカ・メリルリンチ、Blackstoneで様々な金融手配やM&A、資金管理に携わり、 に入社する以前は、日本とエストニアを拠点とするオンライン・ピアツーピア・エクイティ不動産クラウドファンディング・プラットフォーム Crowd Realty, Inc. の創立メンバー兼ディレクターを務める。
慶應義塾大学でビジネスと商学の学士号を、コロンビア大学でサステナビリティ・マネジメントの修士号を取得。現在ULIジャパンのヤング・リーダーズ・グループの会長を務めるほか、ULIジャパンのエグゼクティブ・コミッティーの一員としても活躍。
1) 若い起業家は、日本の不動産で限界に挑戦するために、どのような役割を果たすことができるのでしょうか? | 人々の生活様式の変化に伴い、不動産のあり方も変化してきています。その変化に対峙するには、国を問わず、世代を超えて力を合わせていくことが必要だと感じています。若手起業家は、斬新なアイディアと強い意志を兼ね備え、その突破力を発揮して困難な課題に挑戦します。全てが上手くいくことはありませんが、情熱をもった若手起業家の取組が大きな変革の突破口になると信じています。大事なことは、その業界の大企業や既得権益を守ろうとする方々が、そのような若手起業家の熱意を、そして変化を受け入れることであると思います。 | ||
2) 日本の不動産を盛り上げるために必要なこととは? | 投資対象としての日本の不動産はグローバル市場においても魅力的であると感じています。住宅や物流施設は利回りも安定しており、手堅い投資対象として注目を浴びていますが、同水準の利回りを得ることができる他国の不動産と比較しても、カントリーリスクの低さや価格に対する建物の質の高さ、イールドスプレッドの高さ等で優良な選択肢として捉えられています。従って、日本の不動産は、excitingな投資対象というよりは手堅く安定した投資対象として認識されているように思えます。今後の日本の不動産には、その用途の枠を越えた創造的発想が必要であると考えています。生活様式の変化によって求められる「新しい不動産の在り方」と既存の不動産の実態とのギャップに着目し、ハード面・ソフト面での投資を検討しています。 | ||
3) 日本の不動産はプロップテックでアジアに追いつけるのか? | 不動産テックという言葉は定義が曖昧で誤解を招くことがありますので、ここでは課題解決のソリューションと定義して回答します。なぜなら、現状の不動産業界の課題の多くは、必ずしも技術革新によって解決されるわけではないからです。もちろん、いわゆるディープテックによる技術革新により潜在的に不動産業界の課題が解決される可能性はございますが、アジアにおいても、その成功事例は残念ながら多くはありません。 不動産の業界事情はその国によって大きく異なり、各国の抱える課題は共通課題もありますが、その国固有の課題があると認識しています。まず、共通課題の解決という意味では、日本は出遅れていますし、有力なソリューションは他国のプラットフォームや不動産以外の業界から生み出されていくと思います。次に、固有課題についてですが、日本について話しますと、古くからの業界慣習や既得権益を守る圧力、自由度の低い法制度等によるものが多いと認識しています。ただし、これらの課題の解決において、テックがその突破口を開く可能性は十分にあると考えています。 |
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4) 不動産における観光・娯楽を積極的に変革するために必要なことは何か? | 日本の観光やエンターテイメント領域の不動産における重要な課題は、「ユーザー視点の欠如」であると認識しています。例えば、日本にはその価値が顕在化されていない魅力的な観光資源を豊富に持ち合わせています。その価値が顕在化されていないのは、その価値を評価し、体験し、その体験価値を見出せる適切なターゲットの選定と、そのターゲットの体験価値を最大化させるユーザエクスペリエンスの提供、そしてそのUXを提供する上で必要なデザイン思考が欠如しているからだと考えます。 | ||
5) 2020年の最後の4ヶ月間は、日本の不動産にとって厳しいものになるのか、それともポジティブなポジショニングの始まりになるのか。 | “In the midst of every crisis, lies great opportunity. – Albert Einstein”。アインシュタインの名言で「困難の中に、機会がある」という言葉がありますように、私は今回のコロナ危機をポジティブに捉えています。今回の危機においては、今まで当たり前であった日々の生活に感謝する一方で、今後のライフスタイルについて深く考えるようになりました。人々の生活をここまで大きく変化させる事象は今までになかったと思います。大きな変化が起こる時には、マーケットにも歪みができます。その機会を見逃さないように、自分自身をアップデートし続けていきたいと思います。 |